販路拡大はつながりから(2025年2月3週号)
「これからの農業は作物を育てるだけではなく、多くの人と関わりを持つことで新たな販路につながる可能性を肌で感じた。自分が愛情を持って育てた新鮮な米や野菜を多くの人から手に取ってもらうためのチャンスは無限にある」と話すのは、阿賀野市沢田で「田井農園」を営む田井俊之さん(41)。農産物の販路拡大を目指してさまざまな取り組みを行っている。
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田井さんは地元で200年以上続く米農家の9代目。調理師専門学校を卒業後、新潟市内の飲食店に勤めていたが、32歳の時に実家の農業を継ぐため新規就農した。父親と2人で水稲16ヘクタールを耕作するほか、父とは独立する形で30種類以上の葉茎菜類・果菜類・根菜類と、レモングラスやタイムなどの20種類以上のハーブを栽培する。
田井さんは「販売する作物を育てる畑は見た目から美しくなければいけない」と、自らくわを取り手作業で畝立てを行う。手作業のため、大量生産できない野菜やハーブの活用を考えたという。2年ほど前から知人とキッチンカーを使ったカレーの移動販売を手がけ、各地のイベントなどに出店していた。
売り上げを順調に伸ばした現在は、食材の提供だけに専念しているが、イベントを通じて知り合った異業種の出店者とはつながりを持ち続けている。
新潟市内を中心に野菜のサブスク販売を展開する新潟市上木戸の「株式会社ここのやさい」には現在も野菜を定期的に納品する。
一方、重くて持ち運びが大変な米は、屋外イベントでの販売に向いていないことを経験し、インターネットを利用した米の通信販売にも取り組む。大手通販サイトのほか、自身でも交流サイト(SNS)で情報を発信している。
ネット販売した「コシヒカリ」は評判が良く、2024年産の新米はすぐに売り切れた。「知り合った大勢の方々が何よりの財産。これからもこのつながりを大切にして、自分の生産した農産物をより多くの人から手に取ってもらえるよう工夫を凝らしたい」と話す。