フィリピンと交流 大切な棚田を後世に(2024年8月3週号)
「日本もフィリピンも農業の抱える問題は一緒だと感じました」と話すのは、株式会社えちご棚田文化研究所の代表取締役・岩崎欣一さん(65)。フィリピンの世界遺産「バナウェ・ライステラス(棚田)」を通して現地と交流し、問題を共有しながら棚田の管理に汗を流している。
上越市安塚区で棚田を管理する岩崎さん。安塚区に嫁いできたフィリピン人に頼まれて、約20年前から天日塩をフィリピンから輸入、販売している。
天日塩のルーツを調べたいと思い、18年前に塩を採取する現地の海の上流へ山を伝って見に行ったという。そこには山奥の山岳地帯に沿って棚田「バナウェ・ライステラス」が広がっていた。
同棚田は世界文化遺産に登録されているが、過去には世界危機遺産にも登録されていた。若者の都会流出で担い手不足となり、管理が行き届かず、耕作放棄される田が増えていたからだ。除草剤をまいた畝はもろく、土砂崩れが起きたこともあった。
岩崎さんの住む安塚区でも同じ条件がそろう。500メートル以上の深海が隆起した土地からなり、地滑りの後に棚田を形成。ミネラル豊富な土で稲作ができているが、担い手不足の課題を抱えている。「田んぼを手放す人が増え、面積が毎年2~3ヘクタール増える。10ヘクタールを水管理して作付けしていくのが限度だが、今は20ヘクタール作付けしている。手が回らず満足いかないこともあるが、山を荒らしてしまわないように頑張っています」と話す。
岩崎さんは年に1度、フィリピンを訪問。フィリピンからも日本へ棚田の見学に来る。今後はバナウェの棚田の米の輸入販売をしたいと考えている。
「将来への希望を持ちながら、これからも棚田を通して交流し、安塚の土地を守っていきたいですね」と岩崎さんは力を込める。