にいがた版 2020年11月4週号
ワイン用ブドウ 根域制限栽培で高糖度、着色良好
上越市
創業130年の「岩の原葡萄(ぶどう)園(上越市北方)」では、耕作放棄地の水田を活用したワイン用ブドウの「根域制限栽培」に取り組んでいる。取り組み2年目の今年、通常の栽培方法より早く成熟し、糖度や着色も良く、この栽培方法に手応えを感じている。
「根域制限栽培で日本ワインの生産拡大に貢献したいです」と上村さん
ワイン用ブドウの根域制限栽培。品種はマスカットベリーA
根域制限栽培は、根の範囲を制限し、早期成園化と高品質果実生産を可能にする栽培方法。経験に頼りがちな剪定(せんてい)や摘果などの簡素化と労力の低減、コスト低減なども可能になるといわれ、近年、全国的に取り組みが増えている。
この栽培方法でブドウを手掛けるのは、日本のワインブームを維持するため、同園で必要量を確保する狙いがある。
水田は平坦であるため、ブドウを栽培するには機械を使いやすく、安全に作業ができる。しかし、水はけの悪い地でのブドウの生育は良くないことが多く、水田で栽培することは困難。そこで、圃場に直接植え込むのではなく、根域制限ボックスに培土を入れ、ブドウを植え込む栽培に取り組むことにした。
この栽培方法で育成した「マスカットベリーA」を今年、試しに収穫してみた結果、糖度や着色は申し分なく、通常の栽培方法に比べて1週間程度早く熟したという。
同園の製造部長を務める上村宏一さん(56)は「現在、約60㌃の根域制限栽培ブドウを、圃場整備後は約4㌶にしたいと考えています。自分たちが先駆者となり、他の生産組合や大規模農家に普及していきたいです」と話す。
次年度は、すでに同市清里区の農業法人がブドウの根域制限栽培に取り組むことが決まっている。
同園では「日本のワインぶどうの父」と称される、同園の創業者・川上善兵衛氏から受け継いだ伝統の栽培方法を守りながら、新たな栽培方法を融合させ、安定生産と伝統の両方を守っていきたいと考えている。
「私たちの取り組みに賛同してくれる人が増えてくれることはとてもうれしいです。栽培指導などの要望があれば全力で応じていきたいです」と力強く話す。
(金子晴貴)