増える有害鳥獣被害に対応/狩猟者の育成に貢献(2024年11月1週号)
十日町市中条の池田富夫さん(75)は、有害鳥獣の生態や生息域を熟知する狩猟歴54年の大ベテランだ。豊富な知識と経験を生かし、新潟県猟友会会長兼同十日町支部長を務め、高齢化などで減少傾向だった同市の狩猟者の新規養成に貢献している。
イノシシは繁殖力が強く自然増加率が約1.5倍と高い。2006年に同市川西の里山で集団での出没が初確認されて以降、個体数増加とともに農産物被害が人里まで拡大し問題化している。
猟友会十日町支部の活動は、趣味としての狩猟だけでなく、野生鳥獣の生息状況調査や有害鳥獣の捕獲など多岐にわたる。会員は約120人で、そのうち常時出動可能な人員は40人ほどだ。
イノシシ被害が年々増加する中、会員の高齢化などによる狩猟者数の減少で将来的に捕獲圧が弱まり、爆発的な個体数増加が危惧されていた。そのため、同支部とJA等の関係機関が連携し、狩猟免許の取得を希望する農業者を対象に、18年から毎年定員30人で講習会を開催している。
講習会では池田さんが講師となり、関連法令や基礎知識の座学講義のほか、猟銃やわななどの猟具の使い方の実技講習を行う。受講後は、年4回開催される狩猟免許試験を受検する。
これにより、同支部の新規会員数は18年から23年で58人に上った。高齢化などでの引退で会員数は横ばいだが、新規会員で補い若返りを図っている。池田さんは「狩猟者は一朝一夕に養成できない。長期的な狩猟者の育成が重要だ」と話す。
狩猟活動は、秋冬の狩猟期間に雪が降り積もってから山に入り、追い込み役と仕留め役の10人ほどのチームで動く「巻き狩り」を行う。同県猟友会では、狩猟免許取得後5年以内の狩猟者の技術向上、定着化を目的として、イノシシの巻き狩り研修会を開催し、経験の積上げを図っている。
池田さんは「農地は自分で守る意識を持ち、農業者自ら鳥獣の生態を知り、自ら捕獲に取り組むことで鳥獣被害対策の底上げ強化につながる」と狩猟による個体数管理の重要性を話す。