名水棚田を未来へつなぐ(2023年7月1週号)
2008年に環境省から「平成の名水百選」に選定された「大出口泉水〈おおでぐちせんすい〉」。この名水が流れ込む上越市柿崎区東横山地区でこのほど、同市立柿崎小学校の6年生43人が棚田で酒米を田植えした。収穫した酒米で造った日本酒を20歳の記念にプレゼントする「二十歳に柿崎を呑むプロジェクト」として行われたもので、この活動は4年目を迎えた。
このプロジェクトを支えるのは、地元の農業者7人で構成される「柿崎を食べる会(代表・長井慎也さん=43歳)」。同会は地元の名水を守りながら、大切に活用し、未来へ残していこうと活動している。
「大出口泉水は軟水で、飲み水としても人気があります。このおいしい水を棚田でふんだんに使えるのは地域の特権です」と長井さんは魅力を話す。
また、プロジェクトには同区にある「頚城酒造株式会社」も参画している。
6月上旬、約8㌃の水田に酒米「越淡麗」の苗を児童たちが手で植えた。児童からは「田んぼの中に虫がいてびっくり」「苗を3、4本ちぎって植えるのが難しい」などの声が上がった。
同校では「未来へつなごう柿崎魂」をテーマに、総合的な学習の時間で柿崎の魅力を再発見していく。学年主任の内田昌樹教諭は「未来への視点を持って、柿崎を発信していってほしい」と話す。
今後は10月上旬に収穫作業を行い、来年2月に頚城酒造で仕込み、完成後の日本酒は8年後まで貯蔵される。酒瓶には、児童自らが作成した、未来の自分に向けたオリジナルのラベルが貼り付けられる。
「仲間の存在がモチベーションです。〝こんないいところがある〟と子どもたちに感じてもらい、将来の農業者(仲間)が増えてほしい」と長井さんは話している。