にいがた版 2020年3月2週号
水耕栽培+水産養殖
低コストで環境に優しい
㈱プラントフォーム 長岡市
2018年に設立された長岡市の「株式会社プラントフォーム(山本祐二代表取締役)」では、水耕栽培と水産養殖を組み合わせた新農法「アクアポニックス」に取り組んでいる。従来の植物工場より大幅なコスト削減が図れることに加え、エコな農業を実現している。
「この施設の水耕栽培は、液肥を使用していません」と山本代表 |
アクアポニックスの仕組み |
アクアポニックスは、水産養殖の「アクアカルチャー」と水耕栽培の「ハイドロポニックス」からできた造語。同農法では、養殖する魚の排せつ物を、水中のバクテリアが植物の栄養素に分解し、植物はそれを養分として成長する。植物の浄化装置の役割で、きれいになった水が再び水槽に戻るという仕組みだ。
同社は、19年8月末に約10㌃の国内最大規模を誇るアクアポニックス施設を設立した。施設内の植物は太陽光を使って育成しているため、現在主流のLED(発光ダイオード)型の植物工場に比べ初期費用は4分の1。それに加え、水槽の水は半永久的に入れ替えが必要ないため、運営費用は10分の1で済む。
さらに、通常の水耕栽培では、化学肥料である液肥を使用して栽培するが、同農法では魚の排せつ物が肥料となる。肥料代が掛からずコスト面でのメリットがある上に、農薬・化学肥料不使用の地球に優しいエコな農法だ。
施設内では、レタス(6品種)、スイスチャード、ニラ、ケール、イチゴ、ワサビなど、さまざまな野菜や果物を栽培する他、6個の水槽でチョウザメを養殖。バラやチューリップなど食用以外の植物も栽培可能で、淡水魚であれば基本的に飼育できる。
同施設で栽培した野菜は、昨年末から県内の道の駅や飲食店に出荷している。チョウザメは、2年後を目途に出荷を開始し、6~7年後にはチョウザメから取れるキャビアの販売を計画している。
施設は、グループ会社の「株式会社データドック」が運営するデータセンターに隣接。今後は、データセンター内の機器が発する廃熱と雪冷熱を利用して、施設内の温度や水槽の水温の調節を計画している。
これが実現すれば、生産性と環境への配慮を両立した農法であるアクアポニックスに、余剰エネルギーも活用した無駄のないビジネスモデルとなる。